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会長インタビュー


平成25年8月

インタビュアー 当会フィンランド支部長・師範 イルポ・ヤラモ
*本インタビューはフィンランド国で開催された当会の国際セミナー2013記念誌に掲載されたものです。

井上貴勝免許皆伝範士は琉球古武術保存振興会、唯心会の会長で指導者の長であられます。彼はまた井上元勝の令息で継承者です。1993年に先代ご他界後、御父上の遺産の保存振興 に尽くしておられます。世界でセミナーを開催し、心技の伝統を継承する指導者として良く知られていますが、私たちのどれだけが範士の称号の背後にある人物について知っているでしょうか。

―イルポ
フィンランドにおいでいただきありがとうございます。ヨーロッパで初の開催となる国際セミナーを組織することを名誉と存じます。さて、本セミナーの初期の事について何かお話をいただけますでしょうか。どのように、いつ始まりましたか。

―井上
国際セミナー2013をフィンランド開催できることを嬉しく思います。開催の為に惜しみないサポートを頂いたことに感謝しています。1970年代からすこしづつ海外修行者が増えて参りました。先代井上元勝(がんしょう)は将来を見据え、世界の会員が一同に集い、心技を通じて国際交流を育む機会を願っておりました。検討の結果、1990年に第1回を日本の箱根の地で開催しました。その当時をふりかえりますと、海外からは4か国から6名でした。フィンランド国は当時から参加してくれている貴重な支部です。

―イルポ
セミナーは毎回規模が大きくなっているようですが。

―井上
今回を含め計9回の開催を継続する中、国内外に次第に支部も増え、参加者も増えて参りました。 21世紀に入りましてからは、5大陸から200名以上が参加するまでになりました。

―イルポ
次回の開催についてお考えを頂けますか。

―井上
この国際交流行事は現在3年ごとに開催しています。海外で開催した場合、次は原点である日本で開催することを基本方針としています。2016年は日本を予定しております。こうして国内・外で心技の交流を実現し、育んで参ることができればと考えております。
―イルポ
免許皆伝範士という称号にはどういう意味が含まれているのでしょうか。

―井上
武術で、師から奥義を残りなく伝えられた唯一の者。先代からすべての内容を伝授した継承者と云う意味です。

―イルポ
武術の稽古を始めたのは何歳の頃でしたか。

―井上
父が武術教授でしたので、生まれた時から家庭は武術環境にありました。誠に自然に学んできました。そして先代より7歳の時に徒手の基本の手ほどきを受け始めました。

―イルポ
最初の頃の稽古についてお聞かせ下さい。

―井上
先ほど申し上げました通り、幼少の頃は突けば突く、蹴れば蹴る、受身をとる、先代の後を追いながら自然に身体を動かしていました。そして小学校低学年で父より徒手の基本を習い始めました。そして次第に体術、古武術を始めました。

―イルポ
師としての御父上はどのような方でしたか。

―井上
私は父が黙々と常に稽古をされる姿を見て育ちました。家族で旅行する時もかわりません。一日も自身の稽古を休むことはありませんでした。先代が常に云われておられた「体得が大切」、「上に立つ者は下の者の何倍も稽古せよ」を実行しておられたのだと振り返ります。

―イルポ
唯心会、琉球古武術の他に稽古された武術は何かありますか。

―井上
あります。剣道です。中学に入学するとクラブ活動に必ず所属することが求められます。私は父と相談して剣道部に入部して始めました。以来、高校、大学、会社に入社してからも続けてきました。高校、大学それぞれで恩師、良き先輩、同輩、後輩に恵まれました。

―イルポ
若い時のプランは琉球古武術保存振興会 唯心会のヘッドマスターになる事ではなかったと思います。どのような勉強をしておられましたか。

―井上
東京にある大学で法律を学びました。また剣道部に入部して文武両道に励みました。私は次の継承を感じておりましたのは、中学の頃からです。大学を卒業する頃に継承の為に静岡で就職することも考えました。しかし、先代は、幅ひろく社会を見る、世界を見る必要がある事を助言してくれました。

―イルポ
しばらくクウェートで仕事をしておられました。そこでどのような出会いがありましたか。

―井上
1980年代に3年近く駐在しました。世界各国から仕事のために集まる人と寝食を共にするのですから、出会い・交流を大切にしようという思いでした。単身でした。仕事を終えますと社宅の外庭で毎日稽古していました。私の稽古する姿を見て、自然に人が集まり、ピーク時には40,50人で汗を流した思い出があります。それが結果として仕事の上でも円滑な交流につながり、平素の交流の大切さを感じた次第です。それは今、武術を通じての交流の中でも大切にしていることです。また、肌の色、言葉を乗り越え、文化の違いを乗り越え、心は同じであること、当然のことなのですが、改めて感じました。

―イルポ
藤田先生の思い出は何かありますか。

―井上
何と申しましても私の本名をつけていただきましたのは藤田先生です。生涯の思い出です。偉大な先生ですが、両親を子供の様に愛し、私を孫の様にかわいがって下さいました。

―イルポ
1993年に先代がご他界後、琉球古武術保存振興会の会長に就任されました。
今当会は世界に広がりつつあります。この発展について何を思われますか。

―井上
平信賢先生の夢・御遺志を井上先生が引き継ぎ本土でその実現に努力、そして1970年代から先代の許で修行を重ねた今の海外支部長達が、母国に種を埋め、芽を育て大きな花を実現してくれました。みなの努力・協力があって今があることを一番強く感じております。

―イルポ
海外の門下が訪日し古武術を学ぶことは益々関心があります。そうした門下が訪日を通じてたっぷりと恩恵を受けるためにアドバイスをいただけないでしょうか。

―井上
海外の門下が関心を持ってくれていることは嬉しいことです。琉球古武術についていうならば、大切なことのひとつは井上元勝先生の許に直接学び、その心技を継承する井上貴勝、また師範との交流の機会を持つことは大切です。琉球古武術も日本古武道振興会、日本古武道協会に加盟し演武会に参加の機会を頂いております。総本部サイトには年間計画を記載していますので、参照下さい。

―イルポ
琉球古武術保存振興会の最も重要なゴールは何でしょうか。

―井上
琉球古武術の型は先人先師の心技の結晶です。日本文化です。
師から正確に学び体得し、それを保存して伝えていくことが大事だと思います。常にそこに心の修行がなければならない。心の修行が、技を磨き、人間を作る。究極の目的です。そして日々の修行を通じて得た自信と信念を活かして社会の善導に貢献する、世界の平和につながる道になれば最高だと考えております。
 · 心の修行が最高の目的であること。
 · 体得せよ。
 · 井上先生から御教えを正しく勉強すること。組手、型等を勝手に創作しないこと。
 · 学んだことを生涯を通じて練磨せよ。
 · 交流・協力を大切に

―イルポ
御父上は古武術について多くの本を書かれました。ご自身の本を書くことを考えたことがありますか。

―井上
自分自身の本を書くことより日々の稽古に精進をかさねることが肝心と考えております。ただ、伝承者として先代からの教え(詳細)を引き続きまとめております。ご他界された先代の御遺志でもあります。2000頁ほどの流儀解説資料です。

―イルポ
好きな型は何ですか。

―井上
空手術の型では少林系ではナイファンチン、剛柔系ではサンチンは大切にしています。琉球古武術では棒術の型です。

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